こんにちは、Hです。
みなさんは今どのような立場でお仕事をされているのでしょうか?
顧客向けの業務システム開発に携わる身として、直接顧客と話しながら、システムの仕様を決めていく立場でしょうか?
それとも自社で運用するサービスを企画部門と練りながら、サービスを実装している立場でしょうか?
システムそのものの方向性について、影響を及ぼせる立場で開発に携われることはとてもやりがいのあることだと思います。
日々、採用面談やプロジェクトの要員募集でエンジニアの方と面談するのですが、
そこでも上記のような立場でプロジェクトに携わりたいという話を聞くことが多くなりました。
そこで今回は「面談でよく聞く言葉」について、PMの立場から感じたことを書いてみました。
面談でよく聞く言葉No.1「上流工程をしたい」
採用面談や要員面談でよく聞く言葉が「『上流工程をしたい!』ので、応募しました。」です。
上流工程に携わることによって、システムの方向性についても影響を及ぼせる立場になるからですね。
一方、その場で「上流工程のリスクについてどんなことがあると思いますか?」という質問をしてみると
それについてはほとんど答えられる方がいません。
上流工程というものに「憧れている」部分が強いのかなと思います。
確かに一定以上の経験を積んでくると、直接顧客と話をして、交渉をしたり、
自分から要件を提案したりといったことをしたくなるのは当然だと思います。
それは「向上心」の表れであり、むしろ意欲が強い方とも思えます。
でも上流工程は、必ずしも憧れているような綺麗なことばかりではありません。
- 要件が詰められず、システム開発で作る内容について合意が取れない。
- 要件通りに作成したものの、ユーザが期待するシステムになっていない。
- 要件が決まったころにはすでに当初決めた納期には間に合わないスケジュールになっている。
- 実装・テストのフェーズに入って、要件の不備が多数発生し、システムができあがったころには、開発予算もメンバーも疲弊したプロジェクトになっている。
こういった事象を引き起こす原因を作るのもまた上流工程になります。
上流工程のリスクとは?
IPAでは「ITプロジェクトのリスク予防への実践的アプローチ」を公開しており、
上流工程のリスクとそれによって発生する事象について説明しています。(P.15 リスク事象ドライバー一覧)
この資料では下記のようにITプロジェクトのリスクを引き起こす事象を一覧化しています。
■主プロセス
1 システム化の目的が明確でない
2 現行機能の調査・確認が不足している
3 現行システムとそのドキュメントが整合していない
4 パッケージ選定に関する検討が十分でない
5 性能の検討が十分でない
6 可用性の検討が十分でない
7 運用要件の検討が十分でない
8 運用に向けての制約条件が明確でない
9 要件を獲得すべきステークホルダーが網羅されていない
10 システム部門による要件とりまとめが十分でない■支援・ 管理プロ セス
11 ドキュメントの更新が管理されていない
12 仕様の変更管理ができていない
13 ユーザーによる仕様の確認が十分でない
14 要求の優先度が曖昧になっている
15 業務要件の網羅性が検証できていない
16 設計と実業務の整合性が検証できていない■組織的プロ セス
17 経営層によるプロジェクト運営の関与が十分でない
18 経営層によるスコープ決定への関与が十分でない
19 経営層がパッケージ導入の意図・目的を明示していない
20 ステークホルダー間の力関係がアンバランスである
21 高次の調整・決定機関が機能していない
22 十分なコミュニケーションがとれていない
23 業務用語が共有されていない
24 業務知識が不足している
いかがでしょうか?
一個人が上流工程に携わったからと言って、それだけでは解決できないリスクがたくさんあると思います。
しかしながら「上流工程をする」と決意したなら、上記のようなことをユーザー含めて、開発プロセス・組織に働きかけていって
「プロジェクト全体の成功」に寄与していく必要があります。
それでも上流工程をしたいですか?
「顧客とのコミュニケーションを通じて、実現したい内容を一緒に考えて、顧客のためになりたい」
それ自体はとても素晴らしいことですが、上流工程に携わる以上、今まで述べてきたことと向き合うだけでなく、自ら取り組んでいく必要があります。場合によっては経営レベルでの修羅場に巻き込まれることもあるでしょう。
そんなことを今一度、自分に問い質した上で、本当に自分は「上流工程をしたいのか?」を考えてみるのもいいかもしれません。
ただ、そんな世界に足を踏み入れていくことでご自身のレベルがアップすることはもちろんのこと、今までに無いやりがいを感じていくことでしょう。
上流工程に入るための準備をきちんとして、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。